若葉の下にて
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


この春は 冬が長々と寒かったことが反動にでもなったものか、
途轍もない駆け足でやって来た観があり。
桜の開花も、気温の上昇も、
例年と比較にならぬほどの加速っぷり、
半月は早いという記録的な勢いの“前倒し”でやって来ていて。
殊に桜の開花に関しては、
早くとも四月の頭というのが通例の、
関西やら関東やらには とんだ急ぎ足が過ぎてのこと。
入学式だの入社式だの、
大きく日時を動かせないような式典の
そりゃあ華々しい背景になっていたものが、
今年ばかりは“もう満開は終わってました”という格好で
空振ったという話もあちこちでたんと聞いており。

 「毎年お目見えする見事な桜並木が目玉の、
  商店街とか緑地公園主催の春のお祭りも、
  結構 あたふたさせられたっていう話ですよ?」

お花見気分になればこその振る舞い酒とか、
桜にちなんだお菓子のプレゼントとか。
興ざめだと白けるところまでは行かないまでも、

 「ちょっと残念かなぁ?なんて、
  顔を見合わせて困ったように苦笑されたところが
  今年は多かったことでしょうからねぇ。」

かく言う ウチも、ゴロさん謹製の花見や野点用の特注和菓子が、
どれほど前倒し発注となったことか、と。
濃色のひだスカートのお膝に抱えた、
そちらも愛しの五郎兵衛さんの手作りだろう、
おむすびと つくね団子と、
ポテトサラダに山菜の炒め煮、
甘酢のジュレがまぶされた 白身魚のフリッターのお弁当を見下ろして。
やれやれでしたよぉと
みかん色の髪をさらりと揺らしての、小首を傾げながら、
ひなげしさんこと 平八が苦笑をこぼせば、

 「ホテルJの予約も。」
 「あ…。」

そちらさんもまた、
行楽への影響がまんま直撃しかねぬ お商売関係者。
M区のランドマークにして、
都心でも屈指のラグジュアリーなオーベルジュを幾つも傘下にする、
ホテルJのオーナー、三木一族の跡取り娘が、
けぶるような金の髪の陰にて、
その輪郭もか細い肩を やはりやはり落としておいで。
交通も至便な都心にあるとは思えぬような、
それは閑静なエリアに立地する、
総本山、もとえ、中核となる“本館”の佇まいはといえば。
南欧調の白亜のエントランスゾーンを始め、
明るく緑にあふれたアトリウムロビーに、
夜景のみならずの眺望が見事な、最上階のラウンジバーや屋内プール、
エステにファッション、レジャー関連などなどと、
質のいいパフォーマンスで名を馳せたテナントが、
種々様々に取り揃えられており。
お料理や施設も充実の、
泊まって良し、足場として良しと、
国内外選ばずという広い客層から常に支持されている人気ホテルだが、

 「そちらも予約や何やに影響が?」
 「………。(頷、頷)」

塗りの重箱タイプのお弁当箱に、
きちんと栄養バランスを考慮された献立のお総菜が詰まった、
こちらさんも考案は大好きな榊せんせえという
上品な幕の内をつつきつつの、紅ばらさんこと 久蔵が言うことにゃ、

 「予約変更の嵐で。」

特に桜がお目当てだったお客様には、予定を早めたいとのオファーが多く、
中には いきなりやって来てしまったクチのお人もあったほどだとか。
こちとら ユースホステルじゃないんだからね。
部屋やベッドが ただ空いてりゃいいというものじゃあない、
最高のおもてなしのためには下準備だって色々あるというに、

 「無理を承知でとか、雨露しのげればいいとか、
  何とも強引な言いようしておきながら。
  少しでも足りないことがあれば、細かく持ち出すクチもおってな。」

 「おお、久蔵殿が普段より沢山、しかも進んで話してる。」
 「しかも何げに感情的ですしね。」

陣頭に立ってたご両親が そりゃあそりゃあお忙しかったの、
案じておいでだってのは重々判ったから。
憤慨しつつ三色揚げ串天を振り回すのはおやめなさいと。
白い手をかざし、かあいい次男坊、もとえ
琥珀の宮様の(それも違うぞ〜)笑
カールも軽やかな 綿毛頭を双腕の中へと掻い込むようにし。
まあまあ まあまあと、慈愛をもって諌めた、
鬼百合 もとえ、白百合さんこと七郎次ではあったが、

 「アタシだとて、
  まさか勘兵衛様が、
  花見客の整理なんてなお当番への助っ人に、
  動員されようとは思ってなかったですからねぇ。」

しかも、勘兵衛様が派遣されたところじゃあ、
妙に酔ってしまった女子の方が増えたとかで、
放っても置けぬという搬送に追われたとか…と。
お顔こそ微笑っているものの、
仰ぐようにした白いお手々に握られた
品のいい和島塗りのお箸が ぴしっと物騒な音を立て。
何だ何だと 久蔵殿と平八とが、泳いだ視線でそれを捜し当てたと同時、
次の瞬間には めきょっと曲がったりした日にゃあ、

 「……あら、いけない。」

 「シ、シチさん怖いぞ。」
 「〜〜〜。(頷、頷)」

楕円形の二段重ねのお弁当箱を置いたお膝を支点に揃えた御々脚、
少しほど斜めにして延ばしていたポージングも、
そりゃあ愛らしかったのに。
手元でそんなお茶目をご披露していては世話はない。
こんな笑えるお弁当タイムを、
いつものスズカケの木の下でご披露中の三華様がただが。
そのお姿が頭の先から爪先まで望めるほどに、
少しほど距離をおいている周囲の皆様には、
それはそれは優雅に笑いさざめき合っておいでの、
美々しくて繊細で知的な、憧れのお姉様たちでしかなく。

 「こういうのも“猫かぶり”っていうんでしょうかねぇ。」

メインディッシュは平らげて、
おやつにと付いてた、パイ生地フライの糖蜜かけを
サクサクとかじっておいでのひなげしさん。
スティック状のプレッツェルもどきのそれを、
お友達へも“いかが?”と差し出しつつ、苦笑を見せれば、

 「お話を聞かれそうになったら微妙に取り繕うのですから、
  そうと言われても否定は出来ませんかしらvv」

困ったもんですと、
やや他人事のような言い方をする白百合さんの傍らで、

 「T.P.O.」

時たま、保護者である榊せんせえが楯になってくれての、
つまみ食いだの こっそり息抜きだのも
実は結構やらかしてきた紅ばら様としちゃあ。

 「隠しおおせているのなら、問題はないと言いたいのですね?」
 「……。(頷、頷)」
 「久蔵殿だと、気づかれぬ技も秀でてそうですよねぇ。」
 「……?(???)」

消気の術とか、自然にこなせる凄腕だからと
言いたかったらしい ひなげしさんだったのだが。
抜き足差し足が上手…と言われたような気がしたか、

 「くうほどでは。」
 「?? くうちゃんがどうしましたか?」

相変わらず、言葉の足らぬお嬢様なのへ、
平八がきょとんとし、
こちらはこちらで、久蔵さんのみならずどっちの心情も判る七郎次が、
あまりの可愛さに“ぷくく…”と吹き出しかかりつつ、

 「ほらほら。
  五月祭が片付いたら、
  三木さんチの別邸へ皆で遊びに行くんですし。」

 「……。(頷、頷)」
 「そうでした、そうでしたvv」

 温室も菜園もあって、
 今の時期はバラやエンドウが見事なんですってネ。

 ……綺麗で美味いぞ。

 お二人とも、そんな両極端を一緒くたにしてどうしますか…と、

やっぱりどこかズレてるお三方な模様。
風疹とか海外からのインフルの脅威とか、
急な円安とか、天候不安とかとか。
微妙な不安材料がなくもないGWですけれど。
どうか楽しくお過ごしくださいますようにvv





     〜Fine〜 13.04.25.


  *そいや、今週末から もう連休なんですね。
   今年は続けて休みにくい並びとは聞いておりましたが、
   ホント、真ん中にドーンと3日も“平日”があると、
   学生さんは、学校とかはどうなるんだろ?
   創立記念日とか身体検査とか、
   授業をからませないような行事を繰り出すってのはよく聞きますが、
   3日もとは 難しくないかい?

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